【タイの昔話】3000ビアのワニ タイ中部のある村のおじいさんの話

今回から少しずつタイ各地に伝わる話を紹介していこうと思います。

で、最初に紹介するのはタイ中部のスパンブリー県のある村に伝わる話です。

いろいろと前置きはしてもなんなので、とりあえずお楽しみ下さい。

それでは

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3000ビアのワニ “จระเข้สามพัน

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。

ふたりはスパンブリー県のある川のほとりに家を構えていました。

おじいさんは情け深く親切な人柄で、タンブン※1)や、見た目や身なりにとらわれず誰に対しても助けを施します。

※1:お坊さんに布施したりして善業を行うこと

というのも、誰を助けるべきかそうしないべきかということは、その見た目だけではわからないからです。

ある日、モン族の男が舟を漕いで、おじいさん達の家の前を通りました。

そして、おじいさん達に向かって大声で叫びます。

「じいさんや、今日は何か買ってはもらえないのかい?」

という問いかけに対して、おじいさんは

「じゃあ今日はお前さん、何が網にかかったっていうんだい?」

と尋ねると男は

「おおー、よくぞ聞いてくれた! いつもの魚は全然取れなかった! ちょっとデカイのが1匹だけさ」

と大声で答えます。

「ええっ? なんだって? デカイのって? 白スズキかカイヤン※2)かなんかか?」

※2:サメのような形の魚。ナマズの仲間。食用。

とおじいさんはいぶかしがります。

「水に住むヤモリみたいなもんさ。ワニっていうか…」

とモン族の男はモゴモゴと歯切れ悪く答えます。

「そんなにデカイのかい?」

おじいさんは少し興味を持ったらしく、さらに男に問いただします。

モン族の男はそのワニの大きさを分からせるために、その前足を持ち上げて、おじいさんに見せます。

男が足を持ち上げながらいうには

「まだ前足がこんなもんだから、まだまだ子供だけどね!」

おじいさんは舟に乗り込んで、そのワニのサイズが小さいのを見て満足した上で買う気が起きたので

「あんたはいくらで売るつもりなんだい?」

と値段をたずねました。

モン族の男はしばらく考えたすえ

「…3000ビアかな」

と答えます。

「3、3000ビア!?」

おじいさんはビックリして思わず聞き返します。

「3000ビアが高いっていうのかい? つい2日前にこれより小さいやつを3500で売ったばかりさね。3000ビアでそんなに驚かないで! わかるだろ? ちょっと買ってくれよ!」

とモン族の男はまくしたてます。

おじいさんは男の言葉に納得し

「ホントのところ、オレはこれを買ったとしても、一体どうすればいいのか、とんとわからないんだよ」

と言いました。そして

「うーん、取り敢えず飼ってみることにするか!」

と答えました。

そして、おじいさんがモン族の男からそのワニを買ったあと、そのワニのためのオリを家の前の船着き場にこしらえました。

おじいさんはそれからというもの、毎日欠かさず決まった時間にワニにエサを与えていました。

しばらくすると、小さなワニの子供は大きくなり、立派なワニに成長しました。

どれくらい大きくなったかと言うと、おじいさんのこしらえたオリには、もうはいりきらないほどです。

仕方ないのでおじいさんは、そのワニをオリの外に出して飼うことにしました。

それからも同じように、おじいさんは毎日欠かさず決まった時間にワニにエサを与えていました。

ワニの方も、エサの時間になるとおじいさんのもとに泳いできて、エサをねだるのがいつもの日課となっていました。

こんな風に、ワニも同じ時間にエサをもらえることをわかっていたのです。

ある日のことです。

おじいさんがいつものようにワニにエサを与えようとしゃがんだその時です。ワニの尻尾がおじいさんを強く叩いてしまいました。

その結果おじいさんは川の中に落ちてしまい、あろうことかワニはおじいさんをくわえたまま川の底へと消えていってしまったのです。

それを見ていたおばあさんはビックリして

「助けて! 助けて! おじいさんを助けて!」

と叫びました。

すると、近くに住んでいる人たちはわらわらと走り寄ってきましたが、誰もおじいさんのことを助けることができませんでした。

なぜなら、おじいさんの姿はすでに川の中へと消え、あと形もなくなってしまったからです。

村人たちは「おじいさんが3000ビアで買ってきたワニはおじいさんを食べて殺したに違いない!」とうわさし合いました。

と同時に村人たちは、たとえ子供のワニであろうとも飼ってはいけないということを固く信じるようになりました。

子供のワニはいずれ大きくなり、飼い主に危害を加えるからです。

そして、これ以来この村の名前はジョラケーサームパン村と呼ばれるようになったということです。

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補足説明

この話の題名ともなっている「จระเข้สามพัน(cɔɔrakhêe sǎam phan)」の意味がわからないと村の名前の由来となったことが理解できないと思うので、軽く補足説明です。

単語
  • จระเข้:ワニ
  • สามพัน:3000

というわけで、「3000のワニ」という意味になり、物語本編の「ビア」という単位が省かれています。

「ビア(เบี้ย)」は古代のタイで使われてた通貨単位で、本来の意味は子安貝のコトです。

この村は現在でもスパンブリー県に実在しています。


つづりは「จรเข้สามพัน」と少し違いますが、発音は同じです。

この物語に出てくる川も同じく「ジョラケーサームパン」川のようです。

いかがだったでしょうか?

拙い訳で申し訳ないです。 m(__)m

懲りずにこんな感じでこれからもタイ各地の昔話を時々紹介していきたいと思います。

おわり

(参考資料:「นิทานพื้นบ้าน ภาคกลาง」 CHOMROMDEK)

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