今回紹介することわざは他人に対して容赦のない人を表現したものです。
簡単に言えば時代劇の悪代官のような人に対するものですが、あくまでもドラマでの話で、実際にはこういうタイプの代官は少なかったのではないかと思います。
どーもあそーくです。
日本語にはこの手のタイプの人を表現する言葉がちょっと浮かびません。
と言うくらいに想像している以上に日本語の表現の中には少ないのではないかと思います。
ではタイではどうなのでしょうか?
タイの事情(昔)を見ると、こういった表現が出てくる背景はあるようです。
それではどうぞ
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ทำนาบนหลังคน
ひとの背中で米を作る
発音:tham naa bon lǎŋ khon
- ทำนา:田植えをする、稲作をする
- บน:~の上に、~の上の
- หลัง:背中、裏
- คน:人、人間
意味は、上手いことして(ずるいような感じ)、他人がもたらした益ある結果を、自分のものとすることです。
タイらしく、稲作が由来のことわざです。
寄生米… (゚∀゚)
ではありません。
背中で稲を育てても収穫量はたかが知れていますww
一般的に稲を育てて米を収穫する仕事は普通に疲れます。まだタイでは農業用トラクターは一般的ではありません。
また、せっかく米を収穫してもその米は資本家にほとんど持っていかれてしまいます。
というのも、米作りを始める前には、「その作業に必要なお金を借りる」というのがタイの農業の形態だからです。
この資金を元にしてその年の農作業の経費にあてます。
稲刈りが終わる時期になると、収穫した米から借りたお金の返済に当てなければなりません。
当然農作業というのは、天候にその収穫量を左右されます。
年によっては雨量が不足して、思ったような収穫量を望めないこともあり、返済の金額が不足するということも十分考えられます。
そんな状況でも強制的に取り立てが行われる。あるいは利子が更に増えていくという状況も起こりうるわけです。
こういった状況を「ひとの背中で米を作る」といったことわざで表現したものです。
南国タイでは、米は田んぼに蒔けば勝手に育ち、一年に何度も収穫できる なんてイメージがあるかも知れません。
が、こういったことができるのはバンコク周辺のタイ中部に限ったことです。
他の地域ではだいたい一年に一回の収穫になります。
また、イサーン地方(タイ東北部)では水不足に悩まされることも多く、このことがイサーン地方が貧しい原因となっています。
というわけで、昔は借金により債務奴隷に落ちてしまう人の数も少なくなかったと言います。
でもなんで「背中の上」?? 金持ちが農民の背中に乗っているイメージでしょうけどww
どんな時に使う?
相手に必要以上の損害を与えたり、非情な手段で利益を得るような人に対して使います。
非情な手段とは、相手を物理的・精神的に圧迫するような方法です。
例えばお金を貸し付けてから利子を高くしたり、農民から米を仕入れる時に、非常に安価な値段で買い叩くような場合に使います。
こういった場合には相手の犠牲の上に自分の利益が成り立っている状況です。
足元を見て無理を押し通すということです。一部のタイ人の得意技ですwww
こういった他人の労力を利用するなどして搾取することは、慈悲の心を欠いた方法であり、仏教国のタイでは非難の対象となるのです。
まー、仏教国でなくても褒められるべきことではないのですが、仏教上は特に「慈悲(ความเมตตา)」ということが重要視されている上に、「自分だけ」というのが問題視されるというわけです。
日本のことわざの「他人のふんどしで相撲をとる」も他人を利用することですが、相手が気づかないような場合も含まれるので、少し異なります。
この「ひとの背中で米を育てる」は
「ひどーーい!!」
といった感情がない場合には使えないのです。
具体的使用例
ブッパーさんはソムチャイ君の大学の同級生です。
実はブッパーさんには子供が一人いますが、ソムチャイ君はそのことを知りません。
ある日、ブッパーさんは友人と日本に旅行に行く予定をたてましたが、子供の世話を頼める人がいません。
しかたなくソムチャイ君に
「親戚の子供を預かってるんだけど、5日くらい日本に行かなければならなくなったの。どうしよう?」
と相談するとソムチャイ君は二つ返事で「5日くらいなら自分が預かる」ことを承諾してくれました。
というのもソムチャイ君は密かにブッパーさんのことを気に入っており、ここで点数を稼いどこうと考えたのです。
実はブッパーさんの旅行は10日の予定なのです。
さて、日本での旅行を楽しんでいるブッパーさんのところにソムチャイ君から電話がかかってきました。
「預かってる子供なんだけど、ちょっと熱が出て、どうしたらいい? 親に連絡したほうがいい?」
という内容です。哀れ、ソムチャイ君! たった今、その親に連絡していることは知りません。
ブッパーさんは
「ごめんなさい。急に用事ができて、あと5日くらい滞在しなきゃいけなくなったの。病院連れて行ってくれる?」
「あ、親の連絡は…」
と電話は切れてしまいました。ソムチャイ君、再び電話をすると。
「ごめん。電波が弱いみたい。だから日本はダメね」
「えーと、子供の..」
と言い終わらないうちに
「〇〇病院でお願いね。お土産楽しみにしててね。じゃあ忙しいから」
と一方的に電話を切られてしまいました。
熱でうなされている子供を見つめるソムチャイ君は、その後子供を病院につれていき、たか~い診察料を取られたのでした。
おみやげは
「使いすぎてお金なくなっちゃったの、ごめんネ。でもホント助かったワ ♪」
の一言でした。
この話を友達にすると、事情をすべて知っているソムチャイ君の友達は「そりゃーひとの背中で米を育てるだな」というのです。
しかし、ソムチャイ君は「僕しか頼る人がいなかったんんだ!」と信じて疑わないのでした。
おわり