【タイ語のことわざ】自分を見失うと、余計な出費が増えて大変ですぅ~

「なりふり構わず」というのは目的を達成するためには体面とか手段とかを選ばない時に使います。

そんな必死なさまを表現したものですが、今回紹介するタイ語のことわざは「自らの犠牲もいとわない」といったものです。

自分よりもその守るものの方が大事な場合には「自己犠牲」という対価を払って何かを守るというシチュエーションは考えられます。

ただ、世の中には相手に利益を与えたくないというただ一点のためだけに、手段を選ばない人や集団がいたりするので怖いですね。(笑)

まぁそんな感じのことわざです。

それではどうぞ

ลากหนามจุกช่อง

茨を曳いて戸を塞ぐ

発音:lâak nǎam cùk chɔ̂ŋ

単語
  • ลาก:引く、曳く、牽引する
  • หนาม:とげ、茨・棘のある植物
  • จุก:栓をする、詰める、塞ぐ、閉じる
  • ช่อง:穴、孔、隙間、開いた口、窓口

「ช่อง」というのは上記のような意味ですが、このことわざの中では出入り口の意味なので、「戸」と訳してみました。

「茨を曳いて戸を塞ぐ」というのは、自分の身を守るためにいろいろなことを引き合いに出して、他の人が利益を得られないように妨害することを意味しています。

この妨害工作をすることによって自分自身も利益を受けられないということです。

このことわざ自体はココでも紹介していることですし、存在していることは間違いありません。

ただ具体的にことわざで表現されていることを目にすることはタイでも非常に稀になってきたので、ピンとこないタイ人も多くなってきました。

しかし、昔はこの言葉が口から発せられた瞬間に、どういった状況かすぐに分かるようなものでした。

というのも今の家では一般的でないものが、昔の家はどの家にもあり、それはどこも同じだったからです。

その昔の家では一般的だったというものが二ヶ所の門でした。

昔の家では正面の門だけでなく、裏門も必ず設けられていたのです。

正面に設えられている門というのは見た目もキレイに作られていて、一見して「門」だと分かるようなものでした。

現在の家の門と同じく、昔の家でも門は家の顔といったものなので、その意味するところも同じようなものでした。

これに対して裏門というのは、家の人たちが出入りするときの利便性のためだけに作られたものです。

大きさも、やっとくぐり抜けられるほどしかありませんでした。

用途としては、日本の通用口と同じと考えてもらえれば結構です。

このタイの裏門というのは、開いている時は家の人の利便性から出入りは自由でした。

なので泥棒など、家に入られると困る人たちに対しての防犯方法を考えておかなければなりません。

それで茨などのトゲの付いた植物を持ってきて、使わない時はその戸にぎっちりと張り巡らせていました。

こんな感じで昔のタイ人たちはこのことわざを聞くと、すぐこの裏門の状態をイメージできたのです。

そして現在ではこの言葉通りの意味の他にも、少し違った風に使われるようになったのです。

これがこのことわざとしての使われ方です。

自分の身を守るためにいろいろなことを引き合いに出して、他人に自分の利益を取られないように妨害することを意味した使われ方です。

戸を茨で塞ぐということは泥棒も入れない代わりに、自分も出入りできなくなるという状態から派生してできたのが、このような意味ということです。

どんな時に使う?

他人が自分を出し抜こうとしたり、ビジネスをするときに自分の利益を度外視して相手の行動を阻止したりする時に使われます。

相手に利益を得させたくないというだけのために、自分さえも犠牲にしているような場合です。

ビジネスでは時としてそういったことも必要なのかもしれませんが、普段の生活でこういうことばかりしていると嫌われること間違いありません。(笑)

まぁ大局的に見てどうしても手放せないような時以外は「茨を曳いて戸を塞ぐ」ような行動は慎んだほうが賢明かもしれません。

具体的使用例

花子さんが学生時代に、同じ学科に玲子さんという人がいました。

彼女はお金持ちのお嬢様学校出身で、花子さんたちの大学では掃き溜めに鶴のような存在でした。

しかも学校中で噂になるほどのかなりの美人でした。

しかし花子さんも黙っていれば彼女にも負けないくらいの美人ではあったのです。

それは大学生活が始まったばかりの頃でした。

先に登校していた玲子さんは校門を入るなりみんなの注目を浴びるほどで、特に男子は

「まじ、この学校来てラッキー!」

などとヒソヒソ話してます。すでに女子からの情報でお嬢さん学校出身というのは周知の事実となっていました。

一方花子さんはというと、大学生活の初日だというのに遅刻しそうで慌ててます。

最寄りの駅に着いたはいいのですが、バスはいま出たばかりです。普通のタクシーも運悪くいません。なぜか中型タクシーは数台待機しているのですが…

花子さんは財布の中身を確かめると

「ええいっ」

とばかりに中型タクシーに乗り込みました。

おかげで学校に間に合っただけでなく、教室へ入るなり男子の視線を釘付けにしたのです。

ついさっき教室に入ってきた男子が、花子さんが中型タクシーに乗り付けて登校してきたということを話していたのもあるかもしれません。

授業中も男子の視線は玲子さんと花子さんを行ったり来たりとそわそわしていましたが、最初の講義が終わり、休み時間になると質問タイムの始まりです。

「名前…花子さんですよね?」

振り向くと、ある男子が緊張しつつ花子さんの眼の前に立っていました。

(なんだ? こいつ?)

と軽く威嚇した目つきでその男子を見ると、その先には玲子さんが男子に囲まれつつ

「ごきげんよう」

と教室を出ていく際に、花子さんに対して軽く会釈をする姿が目に入ったのです。

すると花子さん、急に笑顔になり

「えぇ」

おしとやかに応えるのです。何かが花子さんの闘志に火を付けてしまったようです。

「花子さんもお嬢様学校の出身なんですか?」

と変な質問をする男子も男子ですが

「そんな大したものではございませんのよ。ほほほ」

と謎の返答をする花子さんもおかしな感じです。

その花子さんの答えに男子一同

「おおーっ!」

と何故か歓声を挙げています。

妙な空気に包まれたその教室には、「花子さんはお嬢様学校出身」ということを疑う男子学生は一人もいませんでした。

しかし花子さんは自分がお嬢様学校出身などと一言も言っていません。大学まで公立学校をストレートで進級してきたのです。

しかし翌日から花子さんは着ていく服にも気を使うだけでなく、毎日中型タクシーで登校するようになりました。

事情をすべて知っている友人の百合子さんは

「あんた、それ茨を曳いて戸を塞ぐことになってんじゃん!」

と言ってくれたのですが

「いいの、男子の夢を守るのも私の仕事♥」

と訳のわからない返答をするのみです。

花子さんの実態がばれるまでの半年間、彼女がアルバイト三昧だったのは言うまでもありません。

おわり

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