【タイ語のことわざ】オオカミ少年の戯言はコペルニクス的転回を引起す

今回は「嘘つき」というだけの単純なことわざです。

「この嘘つきっ!」と罵られた経験はなくはないですが(笑)、みなさんはどうでしょうかね?

ただ、このことわざの話のもととなった寓話が面白いので紹介したいと思います。

ปั้นน้ำเป็นตัว

水をこねて形を作る

発音:pân náam pen tua

単語
  • ปั้น:こねる
  • เป็น:~として(前置詞)
  • ตัว:姿、形

もちろん水をこねて形を作ることはできません。もちろん氷ならば形になりますが…

意味自体は冒頭で書いたとおりです。

水はこねることが出来ないので、一定のカタチを作ることは出来ません。それがどうして「ウソをつく」ってことになるんんでしょう?

ことわざの元となった話を紹介します。

ことわざの元の寓話

昔々あるところに、男がいました。

ある日、彼は自分の村から他の村に物を売りに出かけることとなります。

その道中、何かが光っているのを見つけます。

近寄って見てみると、何か透明でキラキラとしています。

拾い上げてみると、どうやら固まった硬い水のようです。

水が形になって固まっているなんて今まで見たことも聞いたこともありません。

「まさに奇跡!」

そう思った男は、自分の村に帰って仲間に自慢しようと考え、布に丁寧に包んで持ち帰ることにしました。

自分の村に到着した男は、「固まった硬い水」をみんなに見せびらかそうと、みんなを呼びます。

そして、村のみんなが集まったところで自分の出会った奇跡の話をします。

村のみんなが感心しつつ男の話を聞いています。

そうやって、勿体ぶりながら丁寧に包んだ布をそっと開けると、そこには何もなく、ただ濡れた布があるだけでした。

男は自分の言ったような水を村人の前で披露できず、面目を失います。

その後村人はこの男を「水をこねて形を作る人」と呼ぶようになったとさ。

おしまい

タイ人と氷

物語、どうでしたか?

ツッコミどころ満載でしょ?www

村人達は「氷」というものを見たことも聞いたこともない! というのが前提にないと、このことわざの意味が「ウソをいってはだめ」になりません。

しかも、これはことわざとしてタイ中に常識として広まっているんです。

この当時のタイでは「氷」なんてものは伝説上の物質、オリハルコンかなんかだったんですwww

でなきゃ、この男が嘘つきと断罪されるいわれはないからです。

確実に言えることは、この男はウソをついてません!

固まった硬い水が奇跡かどうかはさておいて、氷がこの世に実在していることは間違いない真実です。

ウソというか、「そんな固まった水なんて知らない」のは寧ろ村人の方です。

非は村人たちの方にありますよね?

このことわざは意外と深いのかも知れません。

本当にオオカミ少年が悪いのか?

あるタイ人のコラムによると

このことわざは、ウソの(正しくない)話を作って、本当のように話すという意味で、いつもうそをつく人に対して使います。

「話していることが全然信用できない」昔の方々はこのようなことを水をこねて形を作ることと例えたのです

と解説しています。やはり男はオオカミ少年のようです。

でも、今回紹介した寓話では、オオカミ少年の言っていたことが真実だったと僕らは知っています。

このコラムの筆者は次のように続けています。

信じられないようなお話でしたが、最初に知っておきたいのは、この話は昔から語り継がれている物語なので、聞き手が楽しめるように付け足されたりかなり奇妙に変形していたりしていることです。

物語によっては生きていくために必要な道徳に関する内容が混ぜられているが、これは楽しみのためのウソをつくことであり、毒にもならず誰にも危険が及ばないものです。

そこじゃねぇーーー!!

村人の無知蒙昧ぶりはすっかりスルーしていますwww

以下、物語などの作り話(ファクトでない)は構わないが、そうでないウソをつくことは悪いことである理由を延々と書いてますw

知ってます。オトナですからwww

仏教におけるウソの意味

どこの国の文化でもウソをつくことは基本的に良くないこととされています。

例外的に「ウソも方便」みたいなものもありますが…

タイは仏教の国ですので、五戒というのを守らなければなりません。

この五戒を破ると人間に生まれ変わることができなくなるそうです。(マジかー!)

その五戒の一つが不妄語戒というものです。ウソをつくというのは相当な覚悟が必要というわけです。

というわけなので、件のタイ人コラムニストは「ウソをつくことは悪いことだけど、物語なんかを作ることはウソに当たらない、例外なんだ!」ということを延々とくどいくらいに語ってたわけです。

「この嘘つきっ!」と何度も言われ続けたあそーくに人間としての来世はやってくるんでしょうか?(嘘ついてるつもりはないんですけど…)

「ウソも方便」なんていって、ウソを簡単に肯定してしまうのとは真面目さに雲泥の差がありますね。

で、事実でないことをいうのがウソであるならば、今回の寓話では村人が確実に五戒を破っているのは間違いありません。

真実か真実じゃないかは、みんなのコンセンサスがあるかどうかで決定することだから村人は悪くない?

なーんて話、最近よく耳にしません?

おわり

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