今回紹介するタイ語のことわざは、タイ人に勤勉さを要求するものです。(笑)
自然豊かで、そんなに働かなくても特に食べるものに困ることのないのがタイです。
そんな環境で勤勉さを説くのは至難の業だと思います。
「ちゃんとコツコツやれよ!」
と言っても
「なんで? (゚∀゚)」
となるのがオチだからです。
とは言っても、バンコクなんかだと現代化がすすんで、結構「เครียดมาาาาาาาาก」な社会になってきたので、このことわざは必要かもしれません。
そんな感じですが、どうぞ
ฝนทั่งให้เป็นเข็ม
金床(かなどこ)を磨いて針を作る
発音:fǒn thâŋ hâi pen khěm
- ฝน:研ぐ、磨く、尖らせる、鋭利にする
- ทั่ง:金床、アンビル
- ให้เป็น:…になるようにする
- เข็ม:針
まずは金床の説明をしないと知らない人も多いと思うので…
アンビルとも呼ばれる工具です。おそらく見たことはあるかもしれません。
職人さんが金属を叩いたり、成形したりするときに使う台です。
鉄道のレールとかから作られるそうです。
西洋のものだと、アイロンを逆さまにしたような形で、馬とかが出てくる古い時代が舞台の映画なんかで見たこともあるんじゃないでしょうか?

引用:Wikipedia
こんな感じのものです。いろんな形のものがあるそうですが、この形が代表的ですね。
結構な質量があるものだということがわかってもらえたでしょうか?
この金床を磨いて針にするのです。同じ鉄製品なので、研磨する道具さえあれば出来なくはありません。
まー気の遠くなるような話です。
というわけなので、このことわざの意味は、どれだけ困難なことでもコツコツ勤勉に頑張れば、必ず成功するということを表しています。
そりゃそうだけど…(゚∀゚)
チャイナの故事に「愚公山を移す」というものがあります。
愚公という人が、家の前の山が邪魔なもんで崩してどかすという話なんですが、結局は天帝の助けで山はなくなります。
頑張ればなんか助けが来るらしいよ的な話です。完全に自分の力だけではありませんが、努力の結果、最終的には山が失くなるという話です。
取り敢えず「すげー」とかなります。
一方、金床を磨いて針にしても
「ああ、磨いて針にしたの? へぇーすごいね (-.-)」
くらいなもんです。
何事もくじけずに勤勉に努力を続ければ、いつかは良い結果を得ることができるという教えなんですが、現代人だと、「結果? 針かぁ」となって、気持ちも萎えてしまうこと間違いなしです。
昔の人はどんな結果だろうと努力できたんでしょう。
その点日本語での同意義の「雨垂れ石を穿つ」は人間は登場しません。雨です。客観的です。
日本の気候風土的に勤勉さというのは死活問題です。
議論の余地はありません。
いろいろとツッコミどころはありましたが、取り敢えず、続ければ必ず成功するという意味のことわざです。
どんな時に使う?
勤勉さが成功の源であると言う考えを納得させるための言葉として使われました。
勤勉にコツコツやっている状況を単に指し示しているのではなく、こういうコトが良いことだと教えていることわざなので、「สุภาษิต(sùphaasìt スパーシット)」です。

ま、コツコツやるのは大事ですが、勤勉さを免罪符にして結果を度外視するのは問題だとは思います。それはいいか。
具体的使用例
ソムチャイ君にはビアという妹がいます。
彼女は今でこそスリムですが、大学生になる前まではちょっとポッチャリとした体型でした。
本人も多少は気にしてたようで
「今日から甘いものはやめる」
とか
「明日から走るからアニキも付き合って」
とかいろいろと体重を減らすのに必死でした。
が、いつも三日坊主です。
そんなビアさんにソムチャイ君はアニキかぜを吹かせて
「続けないと意味ないぞ!」
と言ってみてもビアさんは全然聞く耳を持ちません。
「アタシに合ってなかったからしょうがないじゃない!」
というビアさんに、ソムチャイ君は
「そういうの日本では三日坊主って言うらしいぞ」
と言っても
「それって三日でモノの良し悪しがわかるってことでしょ? アタシすごーい!」
「ちがう! 三日ですぐ飽きるって意味だ!」
「何言ってるの? 坊主ってお坊さんのことでしょ? 偉いんだよ! アニキ大丈夫? ちゃんと日本語の勉強してるの?」
と取り付くしまもありません。そこでソムチャイ君は
「じゃあいいか、よく聞け! 金床を磨いて針を作るっていうだろ?」
「あ、それ知ってる!」
「なら分かるだろ? コツコツ勤勉に努力すれば絶対成功するから」
「分かってるって! ビアはコツコツ三日坊主を続けてるから大丈夫」
(あー、この妹には一生勝てない)とソムチャイ君が悟ったのはこの時でした。
おわり