子供のしつけに関することわざの紹介です。
タイでも子供のしつけ方に対する言葉は存在します。
基本的には日本と同じようですが、表現の仕方がタイっぽくて面白いかな? と。
そんなわけですが、早速どうぞ
รักวัวให้ผูกรักลูกให้ตี
牛は縛って愛し、子は叩いて愛す
発音:rák wua hâi phùuk rák lûuk hâi tii
- รัก:…を愛する
- วัว:牛
- ให้:…してあげる、…してくれる
- ผูก:…を結ぶ、縛る
- ลูก:子供(親に対して)、子
- ตี:…を打つ、叩く
このことわざの意味は、自分が愛情を注ぐ対象が良くなるようにするためには、どんなものであっても細心の注意を払わなければならないというコトです。
自分が愛する者だからといって、簡単に可愛がるだけではその対象は良くなることはないということです。
日本のことわざでいうところの鉄は熱いうちに打てとか、可愛い子には旅をさせろといったものと同じものです。
ときには叱ったりたしなめたりして育てないと、立派なものには成長しないという戒めを表現したものです。
タイのことわざではよく出てくる動物の一つである牛ですが、田んぼを耕す時に使役される動物です。
米農家にとっては欠かすことの出来ない動物です。
そういった事情もあり、牛を飼っている人は普通は自分の牛に愛情を注いでいるのがタイ社会では一般的です。
水牛や牛とタイ人の関係には特別なものがあります、水牛も牛もクワンを持つ動物と考えられています。
タイ人と牛との関係について詳しく知りたい方はこちらをどうぞ(記事では水牛との関係が主ですが牛も同じです)

このように牛は愛情を注ぐ対象であるので杭や木の根元に鎖や紐でつないでおきます。
牛が逃げ出さないようにという理由でつないでいるということも勿論ありますが、その主な目的は牛泥棒対策です。
家の近くに牛をつなぎとめておくことで誰かが牛を泥棒しようと思っても飼い主が近くで見張っていては泥棒しようにもできませんよね。
そして牛を放し飼いにしておくよりも世話が楽だというのもありますが、牛の意思に任せて自分でエサを探させるようにしたとしても牛が立派に成長するかどうかはわかりません。
牛の方もエサを必要量だけ探さなければならないので大変なのは想像できます。
そんなわけで、タイ人には牛を放し飼いにして育てるなんて勇気は出てこなかったのです。
子供の場合も同じです。
子供は親にとっては最愛のかけがえのない存在なのは洋の東西をといません。
毎日子供のことを考えて生活しています。
これは子供の出来が良かろうが悪かろうが関係ありません。
愛情を持つがゆえにときには叱ったりすることも必要なのです。
今の時代で叩いてしつけるという方法をとらない家庭もあるでしょうが、昔のタイでは(日本でも勿論そうでしたが)叩いてしつけるという方法が一般的でした。
「叩く」という行為が適切かどうかの議論はしませんが、とにかくここでは叩くという表現でしつけるということを意味しています。
人間というのは教育してはじめて人間と呼べる社会的存在になるもので、しつけというのは人間になるための必要不可欠なものです。
愛情を注いだ子供には立派な人間になってほしいと思うのは親心です。
そのためには叩く(躾ける)ことも必要だということを説いているのがこのことわざというわけなのです。
このように牛には牛の、人間には人間の育てる方法が異なりますが、立派な牛や人間に育てるためには、ちゃんとその対象に適した方法で注意深く行わなければならないということを教え諭す言葉というわけです。
それを自分の愛情だけに任せて甘やかすだけだったりすると、後で後悔すること間違いありません。
厳しすぎるのも問題ですが、甘やかすだけでもだめと中々難しい作業であるのは昔から変わらないことです。
どんな時に使う?
親に対する指針やお手本として示されるものです。
基本的には甘やかしてばかりだと、あとで後悔することになるよ! といったニュアンスで使います。
新たに牛を飼うことになった飼い主に対するガイドライン的なものではないので注意して下さい。(笑)
具体的使用例
花子さんの中学時代の親友の和子さんがバンコクに遊びに来ることになりました。
そこで花子さんは日本語を勉強し始めたばかりのソムチャイ君を連れてレストランで会うことになったのですが…
花子「和子、ひさしぶり~ 何年ぶりかしら?」
和子「え~と大学のとき一回会って以来じゃない?」
花子「えー、そんな前か」
和子「で、こちらは彼氏さん?」
花子「まー、一応そうなるかな?」
と紹介してもらったソムチャイ君は軽く会釈をします。
実はソムチャイ君は二人の会話の速度が早すぎて半分位しか聞き取れていません。
和子さんはソムチャイ君に軽く挨拶するとすぐに女二人の会話に花を咲かせます。
花子「そう言えば新婚生活はどう?」
和子「どうって…旦那がほんっとに子供で困ってるのよ」
花子「へぇー、男なんていつまで経っても子供だからね」
和子「そうなのよ! 新婚なのにゲームばっかりしてるから一日2時間までって決めたんだけど、子供かって感じよね」
花子「旦那は最初にしつけとくに限るからねぇ」
とソムチャイ君に不敵な笑みをむける花子さんです。
会話の内容は半分くらいしか理解できないソムチャイ君でしたが、なんとなく背中に悪寒が走り、自分にとって良くない話だということくらいは感じられます。
和子さんはソムチャイ君をちらっと見てから
「で、花子はどうやってしつけてるの?」
「えーっ(笑)タイにさ、牛は縛って愛し、子は叩いて愛すってことわざあるんだけどさ、そんな感じかな?♥」
「縛ったり叩いたりしてんの? 花子酷~い(笑)ソムチャイ君可愛そう」
と笑っています。意味のわからないソムチャイ君は笑い返すしかありません。
「子供っぽいだけだから、まだ縛ってはないわよ!」
「えーっ、何? まだって」
「今の所、ちゃんとしつけたらいうこと聞くし(笑)」
和子「そうなんだ。あはははは」
花子「あはははは」
「あはははは」
二人の笑い声が店中に響き渡ります。
話の内容の半分だけでもソムチャイ君は
「なんか女の人って怖い…」
と理解したのでした。
ていうか、具体的使用例になってないし…
おわり