エスカレーターとエレベーターが、どっちがどっちだっけ? と時々わかんなくなりませんか?
僕はこの二つは結構な割合で「どっちだっけ?」となってしまいます。
まーどっちでも日常生活にさしたる支障はきたしていないので、今だにキチンと覚えるつもりはないです。(笑)
ちなみにエスカレーターはタイ語で「บันไดเลื่อน(bandai lɯ̂an)」と言います。
「เลื่อน」がスライドさせるとか、ずらすといった意味なので、エスカレーターには「ズルズルとずれていく階段」といったイメージがタイ人の頭の中にはあるはずです。(笑)
ちなみにエレベーターは「ลิฟต์(líp)」で、元になった単語が「lift」で英国式です。
今回はエスカレーターの話題ではなく、ずれていかない「บันได」についてです。
それではどうぞ
ตกกระไดพลอยโจน
梯子から落ち、思わず飛び跳ねる
発音:tòk kradai phlɔɔi coon
- ตก:落ちる
- กระได:梯子、はしご、階段
- พลอย:(無意識に)つられて
- โจน:跳ぶ、跳ねる、跳躍する
梯子も階段も「บันได(bandai)」と言いますが、「กระได」とも言います。
この「กระได」という単語が載ってない辞書もあるかもしれませんが、一応覚えておいて下さい。
このことわざの意味は、ある出来事が発生してしまった場合、それと何らかの関係を持たざるを得ない状況で、回避することが出来ないというコトです。
梯子や階段から落ちるような状況では、「あ、落ちる」と考えると同時に身体は無意識に動いてしまうものです。
これは本能とか、条件反射といったもので、そのまま重力に任せて落下すると大怪我、場合によっては命の危険もあります。
飛び上がって態勢を整えることによって、少しでも身体を守ろうとする、生まれながらに備わっている危機回避能力のひとつなのです。
このように、「飛び跳ねる」という動詞は自らの意思ですることのできる独立したものですが、梯子から落ちるという状況に陥った場合は、自分の意思とは無関係にしてしまうことからこの言葉は生まれました。
熱い鍋を触ると、思わず手を引っ込めるというのも同じ原理です。
本能的といった無意識にしてしまう行動を、回避できない行動として表現したものがこのことわざです。
どんなときに使う?
何か事件が起きた時に、それを回避できないときや、ある行動をとらざるを得ない時に使います。
また、そういったコトが出来ない場合も含みます。
「〇〇せざるを得ない」か、もしくは反対に「為す術もなく」といった状況下で使われることわざです。
「いやー、どうにもならないっス」
と困った状況ですね。
回避できない理由としてはいろいろあります。
社会的な義務だとか、文化的な圧力だったりと主観的に回避できない状況と思えるものならなんでも OK です。
こんな状況に陥った時は、諦めの心境というか「どうにでもなれっ」て気持ちになりますよね?
まぁ、そんな時に使えることわざです。
具体的使用例
ソムチャイ君が初めて日本に旅行したときのことです。
ソムチャイ君の日本語レベルはほとんどゼロの状態だったので、滞在中はずっと花子さんの金魚のフン状態でした。

滞在期間のある時、花子さんは車でソムチャイ君と一緒にショッピングに行くことになりました。
ちょうど連休中だったので、駐車場はどこも満車です。しかたないので路上駐車をすることにしました。
街はちょうど年末商戦真っ盛りの時期で、ソムチャイ君が初めて見る「ザ・日本」といった状態の商店街です。
若干興奮気味のソムチャイ君を楽しませようと花子さんはいろんな店を連れ回します。
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていきます。
いい加減歩き疲れた二人は帰宅することにします。
車まで戻り、キーを差し込みエンジンを掛けた花子さんでしたが、突然エンジンを切ります。
ソムチャイ「どうしたの?」
花子「ごめん、大事な用事忘れてた! ちょっとココで待って。すぐ戻るから」
ソムチャイ「ココで待ってればいいんですね?」
花子「ごめんね」
と言って車から出ていきます。
それから数分もしない内に粉雪が降ってきます。
雪に対して異常な好奇心を発揮するのはタイ人です。仕方がありません。
車から出て空から降ってくる雪を眺めてます。
と、一台の風変わりな車がソムチャイ君たちの車に近づいてきます。
(変わった車だなぁー)
とボーッと見ていたソムチャイ君ですが、その車がソムチャイ君たちの車に何やらくっつけて持ち上げようとしているのです。
そうです。レッカー車です。
さすがに車を持っていかれると気づいたソムチャイ君は、慌ててレッカー車の人のところへ近づいていきます。
ソムチャイ君「ワタシ、ココにいます」
レッカー車の人はよく意味がわからず
「あ、はい…」
と少し面食らった感じで答えます。
焦ったソムチャイ君は更に
「ワタシ、ココにいます ココにいます」
何度も必死に連呼するソムチャイ君です。
これがいけませんでした。
レッカー車の人は、見てはいけないモノを見てしまったと思ったのか、やばい人につかまったと思ったのかはわかりませんが、明らかに恐怖の色が顔に現れ、ソムチャイ君から顔をそむけてしまいました。
それでもソムチャイ君はレッカー車の人の顔の目の前に身体を移動させ
「ワタシ、ココにいます。ワタシ、ココにいます」
とさらなる連呼を続けます。
しかし、ソムチャイ君の努力も虚しく作業は終了し、ソムチャイ君たちの車は持っていかれてしまいます。
ソムチャイ君はレッカー移動させられている車を、ただ梯子から落ち、思わず飛び跳ねるように見ているしかありません。
しばらくして花子さんが戻ってきます。
花子「え? 車は?」
涙目のソムチャイ君は
「ワタシ、ココにいます…」
と答えるのが精一杯でした。
おわり