今回のタイ語のことわざは「弱肉強食」についてです。
新自由主義です。
同じステージに、同じルールで自由に競争するというのは理念としては間違っていないと思いますが、それにはアクターの性質を考えてません。
近所のおばあちゃんと世界的に有名なグローバル企業が同じ土俵の上で戦うというのは、「なんか変」とは誰もが感じることだと思います。
「じゃあどうすればいいんだ!」 となるんですが、「ルールに則ってやってるんだから問題ないし、仕方がない」というのは解決方法を放棄した思考停止のアホの論理です。
まーそんな堅い話でもなく、単なることわざの説明ですので、らく~にリラックスして御覧ください。
それではどうぞ
ปลาใหญ่กินปลาเล็ก
大魚が小魚を食う
発音:plaa yài kin plaa lék
- ปลา:魚
- ใหญ่:大きい、偉い
- กิน:食べる、飲む
- เล็ก:小さい
このことわざの意味は、権力や力を持っている人、地位の高い人が、そうでない力のない人や地位の低い人を、その力に任せて抑圧したり、圧迫することを表してます。
というわけなので、このことわざについてなにか深い意味があるのでは? と考えても時間の無駄です。
大きい魚は生き延びるために小さい魚を食べます。
これは他の動物でも同じです。弱肉強食は自然の摂理なのです。
ただ、人間の場合だと少し状況が違います。
例えば体の大きな人が、自分より体の小さな人を虐めているのを見るとどうでしょう?
当然、非難の的です。
大人が子供を、お金持ちが貧乏な人を同じ様に苦しめている場合には誹謗中傷の的になるのは大人であったり、お金持ちであったりします。
当然彼らが尊敬されることなどありません。これが人間が畜生と違うところです。
という前提が人間には備わっているために、「力がある人が、そうでない人を抑圧しているということ」がことわざになるのです。
どんなとき使う?
力のある人や国が、他の人や国を虐げたり、抑圧して強奪するような権力を持っている場合に、それを行使しているときや、行使しそうな時に使います。
もちろんその結果として、権力を持っていない人や国に良くない結果をもたらしているという状況が必要です。
この場合、単に相手を抑圧したり、虐めたりするのが目的の場合とはちょっと違います。
一応本人としては正当な行為の結果として、相手が不利益な結果となるというのがポイントです。
具体的使用例
太郎君が小学生の時にあったテレビには、裏番組を録画する機能がついていませんでした。
なので、毎クールごとに姉である花子さんと、チャンネル権を掛けた勝負をするのが恒例となっていました。
太郎君としては、今季は絶対に見逃せない番組があったので、絶対に負けられません。負けたらクラスの話題についていけない可能性もあります。
太郎「テレビの件なんだけどさ、何をするか僕が決めていい?」
太郎君はここで自分の得意なジャンルにもっていき、アドバンテージをとっとこうと思ったのです。
花子「いいわよ、で何するの?」
特に見たい番組もなかった花子さんは気軽に答えます。
太郎「じゃあ、カルタでいい?」
花子「いいけど、子供っぽいわね、なんで?」
太郎「うーんと、なんとなく」
花子「わかった、その代り、カルタはお姉ちゃんが持ってくるやつでいい?」
うなずく太郎君を見て
「じゃあちょっと待ってて」
と花子さんは笑顔で自分の部屋に向かいます。
実を言うと太郎君は、カルタだけは、小さい頃から花子さんはおろか、家族の誰にも負けたことはないのでした。
それを知ってる姉のはずなのに、あっさり承諾したのです。しかも笑顔でというのは不気味でしたが、取り敢えず勝利は確信した太郎君でした。
「おまたせ」
と戻ってきた花子さんは
「ちょっと変わったカルタだけどいい?」
「問題ないです」
と偉そうに答える太郎君に花子さんが説明したのは、読まれた最初の文字が書かれたものを取るのではなく、「読んでる途中の文を探す」というものでした。
他にも細かいルールの説明を花子さんから聞きますが
(なんだそりゃ、変なの)
と思った太郎君でしたが、自分の記憶と手の速さに絶対的な自信があるので
「ま、なんでもいいよ、さっさと始めよう」
と言いかるたをみると、なんだかいつものカルタとはだいぶ様子が異なります。
お母さんに読んでもらうことにしたのですが、お母さんは花子さんを呆れた顔で見ています。
いざゲームが始まると、お母さんが途中の文を読み始めた途端に花子さんは一枚目のかるたを取ってしまいました。
「なーに、太郎カルタ、得意じゃなかったっけ?」
「まだ始まったばっかじゃん!」
と言い返す太郎君ですが、なんだか異変には気づいています。
その後も花子さんは次から次へと取っていきます。
「えー、これじゃ大魚が小魚を食ってるみたいじゃん! ホントは太郎の方が強いんでしょ? 本気出していいのよ!」
と太郎君を挑発しますが、お母さんに睨まれて黙る花子さんです。
なんだかおかしい、自分の知ってる姉ではないと確信した太郎君ですが、友達と「絶対見ような」と約束したことや、自分の不甲斐なさが悔しくて目に涙を浮かべています。
そんな時です。やっとのことで一枚だけ取ることができました。
それをみてお母さんが
「太郎の勝ちね」
(へ?)と思った太郎君がお母さんを見ると、花子さんを睨んでます。
「花子、太郎の勝ちでいいわね」
と再度念を押されて黙る花子さん。
となんだかわからない内に勝利を手にした太郎君が、それが百人一首だと知るのはそれから数年待たなければならず、と同時に姉の底意地の悪さを再確認するのでした。
おわり