【タイ語のことわざ】ホント言うと、外国語は実際使ってみないとねぇ…

他人のことならよく分かるのに、自分のこととなると途端にわからなくなることって良くありますよね?

今回紹介するタイ語のことわざは、そんな「自分のコト」だとよく見えなくなるといったものです。

結構よくありそうな状況なので、日本語のことわざにあるのかねぇ? って思うんですけど、ちょっと心当たりがありません。

なんでなんでしょ?

でも、こういったシチュエーションはすごく理解しやすいと思いますので、タイ語を使うときにぜひ使ってみてはいかがでしょうか?

それではどうぞ

ผงเข้าตาตนเอง

粉が自分自身の目に入る

発音:phɔ̌ŋ khâw taa ton eeŋ

単語
  • ผง:粉、粉末
  • เข้า:入る、到達する
  • ตา:目
  • ตนเอง:自分自身、自己

このことわざは、自分以外の人間に問題が生じたり、困ったことが起こった場合にはその人を助けることが可能なのに、自分自身に同様の問題が起こってしまった場合には、自分自身を助けることは出来ないという意味です。

ちょっとどういうことか分かりづらいですね。

つまり、ことわざにある通りに粉が目に入った場合を考えてみてください。

この場合、普通に考えると自分で目を洗うなり、目薬を注すなりして対処は出来るはずです。

ただ、実際に目に粉が入った場合はどうでしょうか?

確実に人畜無害な「粉」とわかっていれば問題ないですが、「よくわからないもの」だったりした場合、多少は動揺するはずです。

我を忘れるほど驚き、あちこち走り回って「よくわからない」何かを取ってくれる人を探すというくらいに慌てふためく人は非常に稀だと思いますが、ちょっとは焦ると思います。

逆に他の人が目に何か入ったから取って欲しいといった場合に焦って慌てふためく人はいません。

落ち着いて適切な処置をすることが出来ると思います。

この「目に何かが入る」という人間にとって多少は動揺することを喩えにして、誰かが困っていることを助けることが出来る一方で、自分自身の問題の時には冷静な判断ができなくなるということを表しています。

まー簡単に言えば、「他人事だと気にせず落ち着いて行動できるよね」ということだと思います。

どんなときに使う?

自分に問題が起こってしまった場合で、自分だけではその問題を解決することは出来ないが、他人なら問題を解決してもらうことが出来るという状況で使います。

基本的に「自分じゃどうすることも出来ない」といった状況を相手に説明する場合がほとんどです。

「自分のことは棚に上げといて」とは少し違います。この場合は本当はできるのにやらない、しないという意味です。

今回のことわざは「自分では解決できない」という状態が前提としてあります。

具体的使用例

ソムチャイ君の友人のナット君が住んでいるのは、バンコクからバスで15時間ほど行ったところです。

特に観光名所と行ったものもなく、タイ人ですらめったにこないほどの田舎です。外国人が訪れることなどまずありません。

ナット君はここで英語の塾を経営しています。

生徒は3人しかいなくて、正直塾の経営だけでは食べていけないので、時々近くの農家の手伝いなどをしてなんとか生活しています。

そんな3人しかいない生徒はナット君のことを大変尊敬しています。

そのうちの一人が運良くクジに当選して、カリフォルニア1週間の旅を当てました。彼女の名前はペッチちゃんと言います。

彼女にとって海外旅行は初めてです。

両親も一緒に行くことになっているのですが、彼女の一家は海外どころか自分の県さえ出たことがありません。

彼女の両親はペッチちゃんが英語が完璧だと信じて、安心しきっています。

そんな両親の期待に答えねば! とペッチちゃんはすでに今から緊張しています。

と村始まって以来の出来事に村民全部が浮足立っていて、村中どこへ行ってもこの話題で持ちきりです。

ナット君も一肌脱ごうと、タイを出国するまでの間ペッチちゃんに短期集中の個人レッスンを特別にしてあげることにしました。

ペッチ「アタシの英語はアメリカ人に通じるかな?」

ナット「大丈夫! 落ち着いて話せば問題ないから。あとは気持ちで負けたらいけないよ!」

ペッチ「わかりました。先生! 突然話しかけられても冷静になるようがんばります!」

ナット「相手も同じ人間だから、別に緊張しなければ問題ないんだからね!」

と集中講義の最後の授業で激励の言葉をかけたナット君です。

さて、いよいよペッチちゃん一家がカリフォルニアに向けて出発する日です。

多少はバンコクを知っているナット君が一家三人を引率して空港まで見送りに行くことになりました。

スワンナプーム空港の国際線にはタイ人だけでなく、外国人も大勢います。

それを見て

「ペッチ、ここよりすこ~しだけタイ人が少ないだけだから緊張しなくて大丈夫」

「はい、先生!」

となんとも素直なペッチちゃんです。

「先生ちょっとトイレに行ってくるから」

とトイレに向かうナット君です。

(今日は結構欧米人多いな)

とスワンナプーム国際空港に来るのが初めてのナット君は感心していますが、「今日は」というのはどう考えても意味不明です。

そんなナット君がトイレに行ってからしばらくすると一人の欧米人がペッチちゃんの両親に話しかけてきました。

「エクスキューズミー…」

突然知らない外国人に話しかけられたペッチちゃんの両親はビックリして固まっています。

ここはアタシの出番とペッチちゃん

「キャナイヘルプユー?…」

と会話に割って入ります。どうやらトイレを探しているようでした。

自分の英語が通じて自信をつけたペッチちゃんはトイレの場所だけを教えただけだと芸がないと思い、自分の英語の先生が見送りに来てるんだけど、もうすぐ出発なのにまだトイレから帰ってこなくてちょっと困ってる的な話をしてみました。

自分の言ってることが完全に通じ、もうカリフォルニア旅行は問題ないと思い

(やっぱりナット先生はすごい!)

と先生に対する尊敬の念がますます募ったとき、トイレから戻ってくる先生を見つけます。

するとナット君にさっきの欧米人が話しかけているではありませんか!

「エクスキューズミー…」

といきなりたずねる外国人を見てナット君、ちょっとビックリして

「わ、わっと?」

となんとか答えますが、確実に狼狽しているのは間違いありません。

またもやトイレの場所を訪ねていますが、ナット君は頭が真っ白になって、何を聞かれているのかサッパリわかりません。

ペッチちゃんに偉そうなことを言ってた割にはという感じで、まさに「粉が自分自身の目に入る」とはこのことです。

なんとかこの状況から抜け出したいナット君は、通行人に助けを求めようと手を伸ばしますが、みんな忙しそうに去っていきます。

遠くでその様子をみていたペッチちゃんは

「あの外国人は本当に方向音痴だな(笑)。でも先生って大げさなジェスチャーでアメリカ人みたい」

とナット君を羨望の眼差して見つめています。

誰も助けてくれないナット君はますます緊張して、もう何がなんだかわかりません。

だんだん血の気も引いてきたナット君は突然

わーーーーーーーっ

とその欧米人の彼から頭を抱えて逃げ出してしまいました。

そんな様子を見ていたペッチちゃんでしたが、彼女は

(あの外国人、先生を待ってることをちゃんと伝えてくれたんだ! 結構いい人じゃん)

と思い、ナット君に対しても

(そんなに急がなくても本当はまだ時間あるんだけど…)

と申し訳なく思いつつも、大いなる勘違いをしたのでした。

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おわり

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