まるで意味のないロジックで反論されるとどうしていいかわからなくなりますよね?
しかも声が大きかったりすると疲労感が半端ありません。
大抵こんな場合は、自分が間違っていると認識しているものですが、たま~に認識すらしていないこともあります。
そんな時は無視するのがベストの選択だと思いますが、中々難しいものがあります。
どーもあそーくです。
相手が子供の場合ですと、「屁理屈で口答えをするな!」なんて叱ったりも出来ますが、一応建前として対等な関係の場合、「口答え」という言葉は日本語として適切ではありません。
そもそも日本の社会では、基本的には対等な関係にある者同士で、間違っていると分かっているのに大声で自分の正当性を主張するということを想定していません。
なので、この場合に使われる適切な動詞がないのです。
こういった場合に使われる言葉が今回紹介するタイ語のことわざです。
タイ語では一体どういった言い回しをするのでしょうか?
それではどうぞ
เถียงคำไม่ตกฟาก
生産性のない言葉で反論する
発音:thǐaŋ kham mâi tòk fâak)
- เถียง:言い争う、口答えをする
- คำ:語、単語、…言(口にする言葉を数える時の類別詞)
- ไม่:~しない、~ではない
- ตก:落ちる、漏れる、生ずる
- ฟาก:岸、側
意味の前の少し単語の説明をします。
「ตก」と「ฟาก」の個々の意味は上述の通りなんですが、「ตกฟาก」だと生まれるとか、発生するといった意味になります。
子供が生まれた時間を「เวลาตกฟาก」といったりもします。
(「เวลา(weelaa)」で時間という意味)
昔のタイ式家屋は床は細い竹で編んだものでした。これを「ฟาก」と言います。なので、ここに落ちるという意味が転じて「生まれる」ということを意味するようになります。
「เถียง」とは口論する、議論するという意味ですが、子供が口答えするといった意味も含みます。
「พูดโต้(phûut tôo)」や「พูดแย้ง(phûut yɛ́ɛŋ)」、「พูดโต้แย้ง(phûut tôo yɛ́ɛŋ)」と言い換えることも出来ます。
「พูด」は言う、発話するといった動詞で、後ろの部分はそれぞれ「โต้」は「逆らう、抵抗する、歯向かう」、「แย้ง」は「矛盾する」といった意味なので、なんとなくニュアンスはつかめてもらえると思います。
このことわざの意味は「口答えや、意味のない反論が次から次へと出てきて止まらない」ということを表しています。
子供の口答えや、後ろめたい気持ちがある人が反論する場合、次から次へと屁理屈を並べて主張する傾向にあります。
そんな意味のない言葉で主張しても、何も生みませんよ! ということを表したのがこのことわざです。
どんな時に使う?
子供に対してや、大人げない人に対して使う言葉です。
「ああ言えばこう言う」といった様に、口答えが止まらない子供に対してや、次から次へと反論してくる人に対して使います。
二人が相対して、口論している時など、一方が言葉が止まらずに反論している場合、もう一方が言い返すときに一言「生産性のない言葉で反論する奴め」などと使ったりもできます。
具体的使用例
百合子さんは最近結婚したのですが、一つだけ気がかりなことがあります。
それは旦那さんの顔色が結婚式以来、日に日に悪くなってるのです。
「カラダの調子でも悪いの?」
と聞いても
「大丈夫、何の問題もないから」
といった感じで、取り付くしまもありません。
仕事も特に忙しいわけでもなく、仕事上のトラブルを抱えているわけでもありません。
それを友人の花子さんに話すと
「しょーかない、一肌脱ぐか!」
と頼もしい返事をしてくれました。
ちょうど仕事をやめてヒマだった花子さんは、百合子さんの旦那さんをしばらくの間尾行することにしました。
旦那さんは、いつもの様に出勤して、就業中も特に問題ないようです。
同業者なのか、会社の前で誰かを見張っている人も他にいます。
「なんかこの会社は問題が多そうだな」
とか考えたりしているうちに退社時間になりました。会社から出てくる旦那さんを見て
「後はまっすぐ帰宅したら今日の報告終わりか!」
と大きく背伸びしたその時です。
同業者と思しき女がいきなり旦那さんの前に詰め寄ります。
いきなり旦那さんに掴みかかって大声でわめき散らしているので、花子さんは近づいていきその女を旦那さんから引き離します。
暴れまわっているその女を押さえつけながら
「あ、結婚式以来ですね。改めてご挨拶に伺おうとは思っていたのですが…申し訳ありません。」
と旦那さんに向かって丁寧にあいさつをするのは、さすが花子さんです。
一瞬 (゚∀゚) といった顔をした旦那さんでしたが、ハッと思い出したのか
「あ、いえ、こちらこそその節は..」
と暴れる女をほっといて社交辞令の応酬です。
取り敢えず暴れる女を引っ張って喫茶店で話を聞くことになりました。
喫茶店に入り、暴れていた女もようやく落ち着き、事情を聞くと、旦那さんの元彼女だそうです。
女「なんで勝手に結婚した?」
と女は再び暴れだしそうになったので、取り敢えず女の席を移動させて旦那さんの話を聞くことにします。
花子「ねぇ、このこと百合子は知ってるの? マズイんじゃない?」
旦那「いや、いきなり変な女にからまれて…」
と花子さんから視線をそらす旦那さん。
ドンっ!
といきなりテーブルを叩く花子さんです。ビクッとした旦那さんの様子とみて、すかさず
「アタシが良いように百合子に話しとくから。ちゃんと全部吐いて楽になんな!」
と満面の笑みで優しく旦那さんに話しかけます。
ヘビに睨まれたカエル状態の旦那さんはペラペラと洗いざらい白状してしまいます。
どうやら、その女と付き合っていたのは事実らしいのですが、女に二股かけられて別れたこと。結婚したのを知った女が毎日会社に来て迷惑していることなどをぜ~んぶゲロします。
旦那さんが全て話し終わった後、花子さんは女と話をつけにいってくると言って席を立ちます。
さて女と対峙した花子さん。開口一番
「アンタが二股かけてたのが悪いんでしょ?」
というと女は
「いや、そんな訳はない。そんなウソをついてどうする?」
と旦那さんの主張を認めません。
花子さんは、ヘビに睨まれた旦那さんが、ウソで誤魔化せるわけはないし、ココで嘘をついて良いことなんてないので、女が嘘をついているのは間違いないと確信しています。
それでも女はゴチャゴチャと旦那さんがウソをついたと罵倒を続けます。
そして最後に
「だからワタシに慰謝料500万を払うべきだ!」
と大声で叫びました。この言葉を聞いた花子さんは
(コイツ、金が目当てだな)
と確信し、いきなり立ち上がり
バキッ!
とテーブルと踵落としで真っ二つにしてしまいました。
「てめぇゴチャゴチャと生産性のない言葉で反論しやがって! 金が目当てなんだろ!」
と凄みます。
女はいきなり大泣きしますが、花子さんが女をにらみながら、床に落ちたコーヒーカップを拾い上げ、片手でグシャっと握りつぶしたのをみて泣き止みました。
女は絞り出すように
「もう二度と会社に行ったりしません..」
との涙声に
「ウソじゃないだろうな!」
とドスを効かせた声で凄む花子さんです。
女は急いで首を縦に振りますが、もう声は出てません。
女は恐怖のあまり漏らしてしまいましたが、花子さんを凝視したまま固まっています。
喫茶店の中は修羅場と化してしまいましたが
「じゃ、取り敢えず問題解決ということで、近い内に挨拶に伺います。百合子によろしく」
と旦那さんにあいさつをして、さっさと店から出ていく花子さんです。その花子さんの後ろ姿を見ながら
「オリンピア…」
と旦那さんがつぶやいた声が花子さんに届かなかったのは不幸中の幸いでした。
おわり
二人の結婚式や旦那さんのつぶやいた言葉についてはココとかココをどうぞ。
ことわざには全然関係ないですが、万が一気になったら…