「過去50年間生存の確認がなされない場合、その種は絶滅した」とされることから、ニホンオオカミは絶滅したこととなってます。
どーもあそーくです。
オオカミは日本では恐怖の対象でもあり、また畏怖の対象でもありました。
この「オオカミ」にまつわる言葉として「牙を抜かれた」という表現があります。
「オオカミ」の代わりに「トラ」を使う表現もあります。
日本には「トラ」は自然には生息していませんので、むかしはその生態もよくわかりませんでした。
しかし今では「トラは爪も使って獲物を捕まえる」ことを知っているので、牙だけ抜かれても…
ってなわけで「オオカミ」の方がしっくりくるような感じがしません?
「オオカミ」か「トラ」かはいいとして、これと似た言葉がタイ語の中にもあります。
しかもタイで恐怖の対象でもあり、かつ畏怖の対象でもあるのが「トラ」です。
今回はその「トラ」に関することわざの紹介です。
日本語のモノとほぼ同じであることに非常に興味のわく表現です。
それではどうぞ
ถอดเขี้ยวถอดเล็บ
牙を抜き爪を剥がす
発音:thɔ̀ɔt khîaw thɔ̀ɔt lép
- ถอด:はがす(爪など)、~を脱ぐ(服、靴など)
- เขี้ยว:牙(動物の)
- เล็บ:爪(ツメ)
動物の牙は一般に「เขี้ยว(khîaw)」ですが、象の牙の時だけは「งา(ŋaa)」を使うので注意して下さい。
「งา ช้าง(ŋaa cháaŋ)」と言えば分かりやすいです。
と牙の話はおいといて、このことわざの意味は、元々凶悪だったり、獰猛だったりした人が、その凶悪さや獰猛さを手放すということを表したものです。
タイでは強盗や殺人を犯した経験のある人(笑)のことを「トラ」と表現します。
日本語でいうところの「前科者」みたいな感じでしょうか?
日本のトラだと「酔っぱらい」ですよね?(笑)
こういった人が罪を認めたり償ったり反省したりして、そういった稼業から「足を洗った」状態を指して「牙を抜き爪を剥がす」と表現します。
あるいは、もう二度と悪党にならないと誓った人や、今までの自分の行為に嫌気がさして、ひっそりと穏やかに過ごしたいと考えている人に対しても使える表現です。
本当に牙や爪を抜くようなことはないです。(笑)
この牙や爪はトラのそれを比喩的に表現したもので、その攻撃力を手放すということから、こういった言い回しができました。
日本語の表現にある「牙を抜く」場合には爪までは剥がしません。で、「オオカミ」を念頭においた方がしっくりくるというのは冒頭で話しました。
王立学士院の辞書では「手がつけられないほど凶暴であることをやめること。力を見せつけたり権力を誇示することを二度としないこと」とされています。
ちょっと凶暴だったりするだけの人に対してじゃなさそうです。トラ並みの危険性が必要です。
なので、確実に犯罪レベルの凶悪性があった人に対して使うことわざのようです。
タイでは権力にも同じレベルの否定的なイメージがあるってことが行間から読み取れませんか?
日本の時代劇に出てくる悪代官的な人のことでしょう。
とは言っても知能犯的な犯罪者には使用しないようです。
こういう人に対しての表現があるタイの文化は非常に興味深いです。
仏教の「赦し」みたいなのが影響しているのかもしれませんが、そもそも「元」悪党が一定数いないと慣用的な表現って発生しないんですよね?www
どんな時使う?
基本的には「むかしは〇〇だったけど..」みたいに、今と比較する感じで使います。
〇〇の部分は、喧嘩早い悪党だったり、腕に自信があって、人を傷つけたり破壊する行為をしていて、こういったコトでそこそこ有名だったりした場合です。
こういった人が今ではすっかり様変わりして大人しくなったといった状況で使います。
簡単に言えば
「オレってむかしは〇〇辺りでブイブイいわせてたんだけどねぇ。今ではすっかり大人しくなって…」
って言うやつです。
「牙や爪」がない状態になったことを「飼い慣らされた」みたいに否定的な感じでは使いません。
具体的使用例
「バカヤロー! ふざけんじゃないわよ!」
いきなり大声で怒鳴っているのはいつもは女性らしく、清楚でおとなしい雰囲気を漂わせている、誰もが振り向く美人のオームさんです。
ただ、このオームさん一度アルコールが入るとすぐに大暴れしてしまいます。
まさに大トラ状態です。
しかもムエタイの名手で、並の男なら数秒でノックアウトされてしまいます。
今日も知らずにビールを飲ませてしまったために大暴れです。
店の客と大げんかになった末、外に出て大立ち回りを演じます。
いつもなら客が完全にのびた後でも、さらに店を破壊しかねないくらい大暴れするのですが、今日は違いました。
客に飛び膝蹴りをかました後、頭を上げるとちょうど通りかかったソムチャイ君の姿を見かけたのです。
ソムチャイ君がいるとなぜかオームさんは「牙を抜き爪を剥がし」たように大人しくなるんです。
ソムチャイ君は最近知り合ったオームさんが、酒を飲むと凶暴になることを知りません。
しかも
「なんでこんな美人が?」
とかなり困惑気味です。
そんなソムチャイ君にお構いなしに
「あらっ、ソムチャイ君じゃない? こんなところで会うなんて偶然ね ♥」
といって、身体を押し付けてきます。
ソムチャイ君は嬉しさ半分ですが、半分気味の悪さを感じています。
こんな美人が自分に言い寄ってくるのはおかしい! と思えるくらいの分別はあるからです。
しかし、実はオームさんにとってソムチャイ君は初恋の相手なのです。
ソムチャイ君が気づかないのも無理はありません。
だって、オームさんが親友のフック君だなんてことは絶対にわからないほどの変貌ぶりだからです。
おわり