地下鉄でスマホと格闘しているオジサンを見た

毎日電車に乗っていると、色んな人を見かけます。今回はバンコクの地下鉄である、MRTの中で見かけたちょっと変わったオジサンの話です。

いまだに、結局どういういきさつでそうなったのか理解不能なんですが、みなさんと一緒に考えていけたらと思います。

帰宅時間のアソーク

バンコク地下鉄のアソーク(地下鉄の駅名としてはスクンビット)はいつの時間帯も混んでいます。

特にチャトチャック方面の夕方の5時過ぎから9時前くらいは、列に並んでから1本目の電車に乗れたらラッキーというほどです。

ピーク時には4本待っても乗れないことも珍しくありません。MRTカードを持ってなく、トークンを買って乗車する場合は、電車に乗り込むまで1時間! ということも充分ありえます。

そんな夕方のチャトチャック方面行きの電車の中での話です。

MRTの電車内

それは2018年の年が明けて少しばかりたった2月頃のことです。

乗客でごった返していたスクンビット駅から、やっとの思いで乗車できた僕は、「取り敢えず十数分じっとしていれば自宅のある駅まで着ける!」とホッとしていました。

僕はなんとか電車に乗り込めましたが、隣駅のペッチャブリー駅で降りる人は少なく、しかもペチャブリー駅のホームの人だかりはスクンビット駅のそれと大差ありません。

そんなわけで乗れる人なんて一つの入り口から2、3人だけです。

「あの人達、いつになったら帰宅できるんだろう…」

なんてぼんやりと考えていました。

会社員風のオジサン

そうこうするうちに電車はペッチャブリーの駅を出発します。

車内を見回すと、会社員風のオジサンが目に付きます。結構地味めなオジサンで、白いワイシャツでメガネをかけています。上着は着ていますが、ネクタイはしていません。

なんでそんな地味なオジサンが目についたかというと、日本人かなって容貌だったので、

「日本人の会社員かな? 単身赴任かな? こんな満員電車で通勤じゃあ東京と変わらないよね….」

なんて思いもあって、チラチラと見ていました。

オジサンの謎の行動

すると、そのオジサン、おもむろに持っていたカバンの中からB4くらいの大きさの書類の束を出します。

「ん? なんか書類にしては大きいな?」

なんて思っていたのです。

するとオジサンはスマホを取り出し、その書類を写真に撮ろうとしているのです。

「?? なんだ? デザイン関係の仕事?」

あんまり書類の写真を撮っている人は記憶にありません。映画とかではありますが、こんな公共の電車の中で写真撮影なんて聞いたことはありません。しかも自分の書類です。スパイとかでは無いのは確実です。

「なんか絵とかデザイン的ななにかを撮って、写り具合でも調べているのかな?」

こんな事情があるなんて、ほとんどありえないことはわかっていましたが、そうでも考えない限り、オジサンの行動は説明がつきません。不審極まります。

しかし、そのオジサンはなかなかピントが合わないのか、「撮影してはスマホで確認」ということを何度も繰り返しています。

それもそのはずです。満員電車の中です。サラリーマンが新聞を折りたたんで読んでいるほどの空間で、カバンを持ちながら書類の撮影を何度も試みているのです。もちろん腕は2本しかありません。

それでも乗客の少しでも少ない隙間を探して、書類を持った方の腕を伸ばそうとしていますが、すぐに他の乗客の頭にぶつかります。

「いやー、この満員電車の中ではムリだよ! 帰宅してからゆっくり撮影したら?」

と僕は内心思いましたが、それでもオジサンは何度も果敢にチャレンジします。

座席に座ったオジサン

そうこうしているうちに、オジサンはついに諦めたのか、書類をカバンの中にしまいます。満員電車の中です。書類をしまうのもひと苦労です。

電車は停車駅ごとに乗客を降ろし、車内の混み具合もだいぶ緩和されてきました。

オジサンはラッキーなことに座れたようです。

するとオジサンは再び書類を取り出して撮影を再開します。

「根性あるなぁ… きっと仕事を家に持ち帰りたくないタイプなんだろうなぁ」

なんて思ってました。今度は多少は腕を伸ばせる空間があるので、

「オジサン! やったね! お疲れ様でした」

と内心ねぎらいの言葉を投げかけた僕でした。

そして、そのオジサンは腕を伸ばして撮影をします。

「ちょっと変わってたけど、まぁ仕事熱心なだけなオジサンだったなぁ」

と話は終わったかに思ったのです。

しかし、そのオジサンはまたもや書類の撮影をしてはスマホをチェックするを繰り返しています。

「??? あー、スマホのカメラ機能、調子悪いんだ!」

と納得して、「いい加減諦めればいいのに…」と思い、もうそのオジサンに対しての興味もなくなっていました。

オジサンは一番上の紙一枚だけ残して、残りの書類の束をしまったようです。

そして再度撮影を試みています。

オジサンの何度目のスマホチェックのときだったでしょう。

僕は偶然にその書類の中が見えてしまったのです!

そこにあったのは…

B4の紙いっぱいに印刷されたデッカイQRコード

「??? え?」

「その距離だと普通のスマホじゃ画面からはみ出します!」

それまでチラ見だった僕が、目的の駅までオジサンをガン見していたのは言うまでもありません。

2分後、撮影を続けているオジサンをあとに、そのオジサンが日本人でないことを願いつつ僕は電車を降りたのでありました。

おわり