タイで乗り物といったらトゥクトゥクを真っ先に思い浮かべるんじゃないでしょうか?
そんなタイを代表する乗り物である三輪タクシーことトゥクトゥクですが、最近のバンコクでは見かけることも少なくなってしまいました。
今回はそんなトゥクトゥクに関するお話です。
MRTの終電を逃す
金曜日の夜のことです。
タイ語学校に通っていた僕は、何か緊急時でもない限り、授業が終わった後にクラスメイトと軽く飲んでから帰宅するというスケジュールを組んでいました。
だいたい約7日の周期でこの計画は実行されてました。(毎週ともいう)
その日も授業で疲れた頭を癒すべく、いつもの店に集合します。
その日に授業で習ったことをすっかり忘れるくらいに酔った僕は、宴もたけなわでしたが、先に帰ることにします。
アソークでMRTに乗り変えなければならない僕は、BTSが運行しているからといって油断なんて出来ません。
終電の時間は突然やってくるものです。
アソークに着いた僕はいつものように、地下への入り口で荷物検査を受けるために、係員のところへまっすぐ向かいます。
幸い係員はまだ立っています。どうやらまだ間に合うようです。
とは言っても、終電までそう時間はないはずです。
係員の所へ小走りで向かいながら、カバンのファスナーを開けます。準備OKです。
入り口に到着
「不審なものはありませんよ! 僕も不審人物に見えないでしょ?」
的なアピールも兼ねて、ニッコリと係員に微笑みかける僕です。
係員もニッコリと最上の笑顔で返してくれます。
…が、なんだかいつもと様子が違います。
(係員のおねーさん、いつもの「どうぞ」的な手の動きは?)
僕のそんな思いとウラハラに、彼女は両腕を体の前で大きくクロスしています。
✗です。
「いきなり振られた(泣)…じゃなくて、ぴっれーお?」(閉まった?)
と恐る恐る聞く僕に、笑顔でうなずく係員のおねーさん。
紛らわしく突っ立ってんじゃねぇ-!! まだ大丈夫かと思うだろ!
とは口が裂けても言えませんが、タクシーで帰宅することがこの瞬間に決定しました。
くれぐれもアソークのMRT最終電車のチェックを忘れないようにしようと誓った瞬間でもありました。

久しぶりのトゥクトゥク
しかし、ココはアソーク。しかも金曜の夜。
そう簡単にタクシーが捕まるとも思えません。
僕が帰るべき方向にはバンコクでも渋滞1、2を誇るラチャダー通りが控えています。
早くタクシーを捕まえなければ寝るのが何時になるかわかりません。
しばらくアソークでタクシーを捕まえようとしますが、ほとんど先客が乗っていて、僕の前を華麗に通過していきます。
大体1時間くらい粘ってたでしょうか(体感で)?
「待つ」ということが死ぬほど嫌いな僕は、気がつくとアソークを北に向かって歩いていました。
このまま歩いて帰宅するつもりだったんでしょうか?(知らねーよ)
タクシーで15、6バーツ分くらいは歩いたところでしょうか? トゥクトゥクが一台近づいてきました。
困った時のトゥクトゥク
アソークを北上しつつ、振り返ってはタクシーを停める努力は怠っていなかったハズでしたが、その努力が報われる気配すら感じられません。
その代りといってはなんですが、トゥクトゥクが一台捕まりました。
鯛を釣りに行ったのに、釣れたのはクラゲ?! みたいな気分です。
が、そろそろ僕の少ない体力も限界に近づいています。
(料金交渉めんどくせーな)
と思ったとおり、聞いたことのない金額をトゥクトゥクの運転手氏はおっしゃってます。
「は? ならイラねー」的な演技をしますが、敵もさるもの、僕の状況はしっかり把握されている模様です。
足元を見させたら、世界中でタイ人の右に出るものはいないんじゃないか? とつくづく感じさせられる瞬間です。
僕の方も自分の部屋までタクシーだといくら位かは分かっているので、べらぼーな値段に首を縦にふることはできません。
結局、深夜のタクシーとそう変わらない値段で交渉を成立です。そうさ! アンタの勝ちだよ!
タクシーの方がエアコンあるし、安全なので、タクシーが捕まればタクシーに乗車の一択ですが、ま、久しぶりだしいいか!
トゥクトゥクに乗るなり運転手氏は機関銃のように話しかけます。
傍から見ると、どっちが酔っ払いだかわかりません。
運転手氏のトークも最高潮に盛り上がった頃合いに自宅に到着です。
久しぶりのトゥクトゥクでしたが、やっぱりエアコンないし(しつこい?)、運転手は調子に乗るとアホみたいに飛ばすので横転しそうになるし…
「スピード落とせ!」って懇願しても「大丈夫」って決まって答えるし…
「マイペンライ」という言葉は彼らから学びました(笑)。
という感じで、トゥクトゥクに乗るメリットというのは殆どありません。(私見)
今ではトゥクトゥクに乗るなんてことは、こんな感じの緊急事態になった時か、カモ旅行者が乗ってるくらいです。
(あの旅行者たちはいくらで乗ってるんだろう?)
乗っているのは欧米人がほとんどですが、恐らくアトラクションか何かのつもりで乗車していると思います。
トゥクトゥクの未来は
以前はバンコクの交通機関の一翼を担っていたトゥクトゥクですが、今では単なるアトラクションの一種に落ちぶれています。
それもこれもタイ人の「少ないチャンスで最大の利益を!」という性格から、料金がアホみたいな額に跳ね上がったからだと断言します。
もちろんタクシーがバンコクの街で珍しくなくなった頃から、こうなることは充分予想できたのですが、当然対策なんてしませんでした。
MBK(マーブンクロンセンター)の裏辺りでは、今日も
「客いねーな…」
とぼやきつつ、たむろっているトゥクトゥク運転手たちが、思い出したように旅行者然とした人に声をかけ、法外な額からの料金交渉をしているのでした。
ま、乗るとそれなりに楽しいんだけどね。
おわり